豊胸手術を受けていても、授乳そのものができなくなるケースはほとんどありません。母乳は乳腺で産生され、乳管を通じて乳頭から分泌されます。豊胸で使用するシリコンバッグや注入物は乳腺の外側(乳腺下・大胸筋下など)に留置・注入されるため、乳腺や乳管の機能に直接干渉することは基本的にありません。
ただし、施術方法・切開部位・個人の乳腺の状態によっては、乳管や乳頭周辺の神経に影響が及ぶ可能性がゼロではなく、母乳の分泌量や授乳のしやすさに個人差が生じることがあります。
また、豊胸方法のひとつであるアクアフィリング(ポリアクリルアミドゲル)による豊胸は、安全性が十分に保障されていません。
アクアフィリングは体内での安定性が低く、時間の経過とともにゲルが移動・分解されることがあり、炎症・しこり・感染などのリスクが報告されています。さらに、乳房内にとどまらず周囲組織へ広がる(浸潤・拡散する)ケースがあることも、学会において問題視されています。
妊娠・授乳期はホルモン変化により組織の状態が変わるため、とくに注意が必要です。
アクアフィリングによる豊胸を受けている方は、妊娠・授乳前に必ず担当医に相談してください。
豊胸の方法によって、授乳に関連するリスクの内容や程度は異なります。ここでは代表的な3つの豊胸方法ごとに、授乳への影響と注意点を解説します。
シリコンバッグ(シリコンプロテーゼ)による豊胸は、乳腺の下または大胸筋の下にシリコン製のインプラントを挿入する手術です。
授乳そのものへの影響は少ないとされていますが、以下のリスクには注意が必要です。
【乳管・神経へのダメージ】
シリコンバッグ豊胸では、現在は脇の下(腋窩)や乳房下縁(乳房下溝)からの切開が主流とされており、これらのアプローチでは乳管や乳腺への影響は比較的少ないとされています。
一方で、乳輪周囲切開など乳頭に近い部位で切開を行った場合には、乳管や乳頭の感覚神経を傷つけるリスクがあります。これにより、母乳の分泌量の低下や授乳時の感覚変化が起こる可能性があります。
【授乳時の痛み・不快感】
妊娠・授乳期には乳房が大きくなるため、インプラントによる圧迫感や張りの強さが増し、痛みや不快感を感じる方がいます。授乳姿勢によって痛みが出やすい場合もあります。
【被膜拘縮のリスク】
インプラントの周囲に形成される被膜(線維組織)が収縮する「被膜拘縮」が妊娠・授乳を機に悪化するケースがあります。胸の硬化・変形・痛みが生じることがあります。
【シリコンの母乳への混入リスク】
現在の医学的見解では、シリコンバッグから微量のシリコンが母乳に溶け出す可能性は非常に低く、健康への重大な影響はないと考えられています。しかし完全にリスクがゼロとはいえないため、不安がある場合は担当医に相談することをおすすめします。
ヒアルロン酸豊胸は、乳房にヒアルロン酸を注入してボリュームアップを図る施術です。切開を伴わないため手術よりも低侵襲ですが、授乳との関連でいくつかの注意点があります。
【ヒアルロン酸の分解・吸収】
ヒアルロン酸は体内で自然に分解・吸収される成分です。妊娠・授乳期はホルモン変化や代謝の亢進により、通常よりもヒアルロン酸の分解が早まる可能性があります。効果が短期間で失われることがあります。
【しこり・硬結のリスク】
注入したヒアルロン酸が均一に広がらず、しこりや硬結が生じることがあります。授乳期は乳腺が発達してしこりの確認が難しくなるため、授乳トラブルとの区別が難しくなるケースもあります。
【授乳時の違和感・痛み】
乳房内にヒアルロン酸が残存している状態で授乳による乳房の張りが加わると、圧迫感や痛みを感じることがあります。
脂肪注入豊胸は、自身の脂肪を他の部位(腹部・太ももなど)から採取し、乳房に注入する施術です。自家組織を使用するため異物反応が少ない反面、授乳との関連では以下の点に注意が必要です。
【脂肪壊死・石灰化のリスク】
注入した脂肪の一部が生着せずに壊死し、しこりや石灰化が起きることがあります。授乳期に乳腺が変化する時期は、こうした変化の確認が難しくなることがあります。
【授乳時の乳腺と脂肪の判別困難】
注入した脂肪が乳腺組織に近い場所に存在すると、マンモグラフィーや超音波検査での評価が難しくなるケースがあります。乳がん検診を受ける際は、脂肪注入豊胸を受けていることを必ず医療機関に伝えてください。
【授乳時の痛み】
脂肪注入後は乳房内の組織構造が変化しているため、授乳によって乳房が張った際に痛みや違和感を覚えることがあります。
豊胸後の授乳に関するリスクを最小限に抑えるためには、施術のタイミングや方法の選択が重要です。以下の点を参考にしてください。
豊胸手術・施術を受けた直後は、乳房組織が安定していない状態です。
傷の回復・インプラントの定着・注入物の安定が十分でない段階での授乳は、施術部位への過度な負荷になり、感染・変形・被膜拘縮などのリスクを高める可能性があります。
豊胸後に妊娠・授乳を予定している場合は、担当医に術後の経過と授乳開始の時期について必ず相談し、適切なタイミングを確認するようにしましょう。
その際は、授乳開始の目安時期だけでなく、使用しているインプラントの種類や切開部位と乳管への影響、これまでの術後経過や合併症の有無についてもあわせて確認しておくと安心です。
豊胸後の授乳リスクは、施術の精度・切開部位の選択・使用するインプラントの品質によっても大きく左右されます。豊胸手術は術者の技術や経験が結果に大きく影響するため、以下の点を確認したうえでクリニックを選ぶことが重要です。
・豊胸の症例数
・実績が豊富であること
・将来の妊娠・授乳を考慮した切開部位
・施術方法を提案してくれること
・アフターフォローや術後の相談体制が整っていること
・医師が丁寧なカウンセリングを行い、リスクについて正直に説明してくれること
「安いから」という理由だけでクリニックを選ぶと、安全性や術後管理が十分でないケースもあります。長期的な視点で信頼できるクリニックを選ぶようにしましょう。
授乳へのリスクをゼロに近づける最も確実な方法は、出産・授乳が終わってから豊胸を受けることです。授乳終了後は乳腺が縮小し、乳房の状態が安定します。
このタイミングで豊胸を受けることで、以下のメリットがあります。
・授乳への影響を心配せずに済む
・授乳後に変化した乳房の形
・ボリュームを整えられる
・乳腺の状態が安定してから施術できるため、仕上がりが予測しやすい
「授乳後に胸がしぼんでしまった」「妊娠前よりも形が変わった」というお悩みを持つ方にとっても、授乳後の豊胸は理にかなった選択肢です。
イセアクリニックでは、授乳後の胸の変化に悩む方に向けた豊胸施術を数多く手がけています。授乳後に起こりやすい「しぼみ」「下垂」「左右差」などのお悩みに対して、お一人おひとりの乳房の状態に合わせた最適な施術プランをご提案します。
経験豊富な医師が丁寧なカウンセリングを行い、将来的な妊娠・授乳の予定や希望に応じて、シリコンバッグ・ヒアルロン酸・脂肪注入それぞれのメリット・デメリットをわかりやすくご説明します。

豊胸後に授乳すると痛みを感じる方がいます。妊娠・授乳期には乳房が膨張するため、インプラントや注入物によって内側から圧迫される感覚が強まることがあります。
特にシリコンバッグを挿入している場合、乳房が大きくなるにつれてインプラントの圧迫感が増し、張りや痛みとして感じることがあります。
痛みが強い場合や長引く場合は、担当医に相談することをおすすめします。
授乳姿勢を工夫したり、授乳クッションを使って乳房への負担を減らすことで、不快感が軽減することもあります。
授乳マッサージの可否は、豊胸の方法や術後の経過によって異なります。
シリコンバッグ豊胸の場合、強い圧迫や摩擦はインプラントのずれや被膜拘縮を悪化させる可能性があるため、力加減に注意が必要です。
ヒアルロン酸・脂肪注入の場合も、注入部位への過度なマッサージは注入物の偏りや吸収促進につながる場合があります。
授乳マッサージを行いたい場合は、必ず担当医に確認のうえで行うようにしてください。
授乳後に乳房がしぼんだ・垂れてきたというお悩みは、豊胸によって改善が期待できます。
授乳によって失われたボリュームを補い、形を整えることは豊胸の得意とするところです。
ただし、下垂(たれ下がり)が強い場合はボリューム補充だけでは対応が難しく、乳房挙上術(マストペキシー)との組み合わせが必要になることもあります。
授乳後の乳房の状態は個人差が大きいため、まずはカウンセリングで医師に状態を診てもらったうえで、最適な方法を検討することをおすすめします。
豊胸後でも多くの場合は授乳が可能ですが、豊胸の方法・施術の状態によっては授乳時に注意が必要なリスクがあります。本記事のポイントを以下にまとめます。
・豊胸後の授乳は基本的に可能だが、方法によってリスクの内容が異なる
・アクアフィリングは安全性が保障されていないため、妊娠・授乳前に必ず担当医に相談が必要
・シリコンバッグは被膜拘縮・痛み・感覚変化、ヒアルロン酸は分解促進・しこり、脂肪注入は脂肪壊死・検診への影響に注意
・リスク回避には、豊胸直後の授乳を避ける
・実績あるクリニックを選ぶ
・授乳後に豊胸を受けるという3つの方法が有効
・授乳後の胸の変化(しぼみ・下垂)は豊胸で改善が期待できる
豊胸と妊娠・授乳に関して不安や疑問がある方は、一人で悩まずに専門医へご相談ください。
イセアクリニックでは、将来の授乳も視野に入れた丁寧なカウンセリングを行っています。