吉種 克之 (ヨシタネ カツユキ)
それも、一つの治療だと
本気で考えています。
Q1 Q さまざまな分野があるなかで、形成外科医になろうと思ったきっかけは?
A
一枚の写真との出会いが、
医学の可能性に気づかせてくれました。
医療は大きく内科と外科に分かれていますが、私は自分の手を使った技術で患者様を治療していきたいという想いがあったので、外科医を志しました。最初は小児外科か脳外科で進路を迷っていて、そんな時に大学の形成外科の授業で一枚の写真を見たんです。
そこには、交通事故で深い傷を負った女性の顔と、それが手術により見事なまでに復元された同じ女性の顔が並べて写っていました。「こんなことが医学で可能なのか」と感銘を受けましたね。それから形成外科医の道に進み、28年間技術を磨いてきました。現在は美容外科を専門に行っています。ほかの治療は、元の状態に戻すことが基本になりますが、美容外科は全く異なります。元の状態があって、その上を目指していくんです。
基準や正解がないためとても難しい世界ですが、医者としては常に技術を磨き、上が目指せる環境に身を置けます。現状維持を目指していれば、技術は衰えていくばかり。だからこそ常に技術の研鑽に取り組まなければなりません。大変ではありますが、それが美容外科医ならではの醍醐味だとも感じています。
Q2 Q 患者様と接する上で、大切にしていることは何ですか?
A
患者様と一緒に考え、
本音で向き合っていくことです。
技術が一番大切かもしれませんが、患者様と本音で向き合うこともそれ以上に大切だと考えます。たとえば、患者様が望む治療がありました。じゃあそれをすることが治療なのかというと、そうではありません。しないことも、治療なのです。本当に必要なものは何かということを、しっかりと患者様と一緒に考えた上で進んでいくべきだと思います。
もちろん患者様も悩みがあってお越しになるので、「しないほうがいい」と言ったからって、すぐに納得するわけではありません。そういう時は、ここで決めるのではなく、一回家に帰って、一人でもう一回考えて、それで考えが変わらなければお話しましょうと伝えていますよ。
治療や手術はいい結果を得ることが目的ではありますが、反対にそれだけのリスクも存在しているということを、やっぱり真剣に考えてほしいんです。だからこそ、私も包み隠さずお話しさせていただいています。
Q3 Q 患者様と本音で向き合う。その姿勢が生まれたのは何か理由があったのですか?
A
患者様にとって、
医者は1人のうちの1人。
その責任の大きさを、改めて感じたからです。
先輩の医者から聞いた話がきっかけですね。小学生くらいのお子様を治療していたときに、その両親から「先生にとっては一人の患者かもしれないけれど、私たちにとっては先生しかいないんです」と、そういうふうに言われたと私に話してくれたことがありました。
当り前と思うことも、直接話で聞くと心が揺さぶられましたね。私たちにとって、その患者様は100人のうち1人でも、患者様にとっては1人のうちの1人なのです。それから襟を正すというか、これまで以上に責任感を持って患者様と向き合っていこうと考えるようになりました。
以前、初めてお会いしたとき、「大丈夫かな?」って思うぐらい表情が暗い女性を担当したことがありました。けれど、本音で向き合っていくうちに、少しずつ表情や話し方も明るくなっていきましたよ。そういう患者様の姿を見るのは、医者としてやっぱり嬉しいものです。
Q4 Q 最後に、患者様に伝えたいことはありますか?
A
人生を左右するリスクもある。
よく考えてから決断してほしいです。
一つのクリニックで決めること、その場ですぐに決めることは絶対にしないでほしいです。それと自分が希望する以外の手術は一切やらないでください。
たとえば、目の手術だけをしたいのに、「鼻もやったほうがバランスはよくなる」と医者から勧められても断ってほしいです。必ず後悔しますから。ここをやったから、バランスが悪くなるなんてことはひとつも存在しません。みなさん、「私のためを思って言ってくれた」と勘違いしちゃうのですが、そうとは限らないことを頭に入れておいてほしいです。
医療は綺麗事ではないので、収益がなければクリニックを運営していけないというのは当然あると思います。だからといって、患者様に必要のないリスクを背負わせてまで、収益を優先したいというのは私の中では考えられません。
もちろん私の話を聞いて、他に行く方もいくらでもいますよ。いろんな医者の意見を聞くことで、さらに迷うかもしれませんが、それも自分のため。人生を左右するかもしれないことですから、よく考えて決めてほしいです。
東京イセアクリニック院長
吉種 克之 ヨシタネ カツユキ
日本形成外科学会 認定専門医
日本美容外科学会 認定専門医